「せ、ん。
お、まえ…は…、い、き、ろ。
お、れは…もう…」

「景丸。もう、何も。
何も言わなくていいから…。

死なないで…。
お願い!!」

言いたいことは、たくさんあった。

城に来て一年。

ずっと抱えていた。
景丸への想い。

子のためと、殿への想いを募らせた日もあったけれど…。

「私が愛したのは、景丸。
あなただけ…。

あなただけ、なのです」

溢れ出る涙も構わずに、千は訴える。

その告白を満足そうな表情(かお)をして、景丸は頷くと。

そっと、瞳を閉じた。

「千。愛している」

微かな囁きを残して。


「かげまる―――!!」


千の叫ぶ声が、城内にこだました。

血にまみれ、抱き合ったまま、離れようとしない二人の姿を、呆然と立ちすくみ、見つめる殿。

千は殿に声をかけた。

「どうかここで、私も。
景丸のいる場所へ逝かせてくださいませ」

しかし、殿はそれを許さなかった。

「殿。お子が欲しいのであれば、どうか小雪を…。
守ってくださりませ」

小雪もまた、殿の子を宿していた。

「私は、景丸と共に。
逝きとうござりまする…」

温もりが、消えてゆく―――。