「なぜ、わしにまで嘘をついた?」

「正室のお高様に知られたら、命を狙われるから、と」

病のふりをしていなさい。
そう言われた。

けれど、知られてしまった。

予測していた通り、刺客が館にやってきた。

「殿のおかげで助かりました」

けれど…。

「けれど、殿。
私の命も、もはやここまで」

殿にひざまずき、頭(こうべ)を垂れ、

「どうぞ一思いに、お斬りください」

頭を下げる。

なぜだか、涙が溢れた。

ポタリ・ポタリ。
後から後から溢れる涙が、地面を濡らす。

千は覚悟を決めて、瞳を閉じた。

シャッッ――。

鞘から剣を抜く音に、肩に力を入れて、更にきつく目を閉じた。

………。

「せ〜ん!!」

ザシュ。

自分を呼ぶ声と、何かが斬られる音―――。

ドサッ。

崩れ落ちる人影。


―――!!

「かげまるっ!!」

そこには、振り下ろされた刃によって首から背中までもを斬られ、横たわる景丸の姿。

「せ、ん。
いのちは、…そ、まつに…
す る な…」

息も絶え絶えに訴える。

「…かげ、まる?」