城に招かれた『千』。

千本桜にも負けない、美しい少女になって欲しい。

両親の願い通り、千は心身共に美しい娘へと成長した。

その美しさは城下町でも評判となり、その噂は城にまで届いた。

『どれほど美しい娘なのか、一目会ってみたい』

という殿の願いを叶えるために、舞を披露することとなった千であった。

その席で見初められた千は、側室として迎えられ、まもなく一年が経とうとしていた。

城に住む者としての、言葉遣いから、読み書き、立ち居振る舞いまで…。

様々なことを学んだ一年であった。

側にはいつも小雪がいて。

小雪と共に学んだ一年。

小雪がいたから、この場所での生活も、なんとか暮らしていけた。

けれど、本当に一緒にいたいのは、夫婦の約束を交わした、景丸だけ。

「私にはもう、逃げることなどできません。

だから、私のことはもう、忘れなさい…。

そう、伝えて欲しいのです」


口から出るのは真逆の言葉。

いつか一緒になりたいと思っているのに、それはもうできないことと諦めた。

ふたりで生きることは、夢のまた夢の物語。

ここで、別れを告げなければいけないのだと、自分に言い聞かせて。