「あなたと夫婦になれないのなら…」

少女は立ち上がると着物の帯を緩めると、肩から腰の辺りまで肌をあらわにした。

「せめて、今ここで…」

月明かりに照らされて、妖艶に輝く白い肌。

そのあまりの美しさに、景丸は息をのんだ。

「景丸。
私を抱いてください…」

腕から落ちた着物は、はらりと千の足元に落ちた。

覚悟を決めて、一糸纏わぬその姿を景丸の眼前に晒す。

初めて見る女性の肉体。

美しいその身体を、本心では自分だけのものにしたいのに。

「千。それはできないよ」

目のやり場に困った景丸は、華奢な少女の身体を抱きしめていた。

涙を浮かべて、救いを求めていることは景丸も充分に分かっている。

叶うことなら、望み通り千を連れて逃げ出したいのに。

幼い景丸には、それができない。

「千はもう、『姫』なのだから…」

悔しくて、涙が出る。

なぜ…。

なぜ、千でなければいけないのだ?

なぜ…。

なぜ…。

………。

なぜ、私から千を奪う?