トンネルの下、手をつないで歩く。

風に吹かれて、はらはらと、花びらが舞い落ちる。

トンネルの下には、散り落ちた花びらでピンクの絨毯ができていた。

散り行く花びらは、どこか淋しげで、儚くて。

見上げたあたしは、涙がでそうになる。

つぼみが膨らみ、花が咲くまでは、ドキドキ・ワクワクするのに。

満開の花が散る頃には、あたしはどうしようもなく、切なくなってしまう。

「ここさ、昔、お姫様が一番好きだった場所らしいよ」

トンネルの中頃まで歩き、そこに置かれているベンチに腰かけて、隆は言った。

つられてあたしも、隣に座り、

「そお?
あたしも、この場所一番好きだけどね」

つぶやいた。

桜公園というからには、桜の名所はいろいろあって。

その中でも一番好きな、桜のトンネル。

「そっか…。
実は、俺も。

ここ、莉奈と見たかった場所なんだよね」

さりげないけれど、すごく嬉しい言葉に、あたしはまた涙があふれそうになる。

隆に気付かれないように、指でそっと涙を拭う。

隆はそんなことに気付きもしないで、ガサゴソと袋から取り出しただんごを持ち上げて。

「くろみつだんご、食べながら」

そう言って。
笑った。

目と目を合わせて、あたしたちは笑い合った。