この時俺は気付いた


目で追っていたのは俺だけじゃなかったと


学校の帰り道この駄菓子屋に寄りホームランバーを買う事


“幸汰君ってこの町好きでしょ?”


あの時言った言葉


川を泳ぐカルガモにパンのカケラをあげていた彼女

学校の帰り道、鼻唄を歌いながら帰っていた彼女

綺麗な夕日をずっと見ていた彼女


そんな彼女を見ていたように、彼女もまた俺を見ていた


だからこそ知っていたんだと思う


俺も綺麗な夕日を見ると立ち尽くしてしまう事に



それなら今のこの気持ちも彼女と同じだろうか?


田舎の田んぼ道をアイス片手に自転車を走らせる2人の波長が心地よい


田んぼの稲穂に黒い影が並ぶ姿が嬉しい


---キィ…とブレーキをかけたと同時に俺はこの言葉を口にした




『俺、佐々木さんが好きだよ』


生まれて初めて誰かに好きと言った

彼女は慌てて自転車を止めた


本当は告白なんてするつもりはなかった


これは俺の密かな片想いで終わるはずだった


別に彼女が俺を好きじゃなくても、片想いが実らなくても

俺はどうしても今、この気持ちを伝えたかった




『………私も幸汰君が好き』


そんな返事が返ってきた頃には、2人のアイスはすっかり溶けていた


ポタ…ポタ……と白い雫が垂れ、僅かに棒に刺さっていたアイスがボトッと音を立てて地面に落ちた



『『あ………』』


俺達の声はハモり、二人して棒だけになった右手を見て笑った