まさか彼女がアイスを食べようなんて言うとは思ってなかった


彼女は自転車から降り、アイスが入ってるガラスケースに近付いた


俺も慌てて自転車を降り、彼女に駆け寄ると……


彼女の手にはもうアイスが持たれていた


色々なアイスがある中で、彼女は迷う事なくホームランバーを手に取った


正方形の形をした棒付きアイス

銀色の包み紙の中身はシンプルなバニラアイスだった


それは紛れもない俺がいつも買うアイスだ


-----気のせいだろうか?


まるで彼女はそれを俺が好きだって知ってるみたいに、ためらいもなく二つ買った


再び自転車に乗った俺達は、左手でハンドルを持ち右手でアイスを持った



『……どうしてこのアイス選んだの?』


聞かずにはいられなかった


正直もっと有名なアイスはあったし、あの中からホームランバーを選んだのには理由があると思ったから



『だって幸汰君このアイス好きでしょ?』


彼女の答えはこのバニラアイスの味みたいにシンプルだった


溶けないように上手くアイスを食べる彼女の横顔を見つめながら、

俺の右手に冷たいアイスの雫が垂れる


彼女はそんな俺の顔を見てニコリと笑ってみせた