夕焼けが俺の全身をオレンジ色にしていた




『頂上に着いたね。これが見たかった景色だよ』

俺は町を見ながら隣に目を向けた



隣には誰も居なかった



俺はもう一度オレンジ色に染まった町に目を向けた



『俺は一生この景色を忘れないよ。ねぇ…今笑ってる?』


--その瞬間涙が溢れた


俺はその涙を拭かなかった


だって、本当はずっと泣きたかったから

泣いて
泣いて
泣いて

涙が枯れるまで泣きたかったから




----31日の朝、家の電話が鳴った


それは彼女のお母さんからで、彼女が死んだという知らせだった


彼女は前日の深夜から高熱を出して、ウィルス性肺炎の合併を起こし翌日の朝、息を引き取った


嘘だと思った

そんな訳ないって

そんな簡単に彼女が死ぬ訳ないって


急いで病院に行き病室に入ると彼女は居た


まるで眠っているようだった


俺は彼女と二人っきりにしてもらい、いつものようにベッドの横にある椅子に座った


そして彼女の頬にそっと手を当てた


まだ僅かに温かい気がして、また現実から逃げそうになった


いつもの彼女なら絶対こう言う


眠い目を擦りながら、

『あれ?幸汰来てたんだ。ごめんね、寝ちゃってた』って


俺は彼女の頬を何度も触り、手を握っても彼女の口からその言葉が出る事はなかった