俺の限界なんてとっくに越えていた

サイクリングを趣味とする人さえ大変だという道を俺は登っているのだから


だけど人間の力は本当にすごいと思う


だって限界を過ぎても、俺の心は折れないのだから


きっと俺は一生分の底力を今出している

多分これから先、こんなに頑張る事なんてないと思う


コンクリートに映る影が色濃くなり、夕暮れが近付いていた

どんどん変わっていく空の色

周りの森林が赤い光りに包まれていく


俺の頬にも暖かい光りが反射していた

俺は最後の力を振り絞りペダルを強く、前へ前へこいだ


---ハァ……ハァ…

上手く息が吸えない

だけど俺の目線はただ前だけ


---ハァ…ハァ………ハァ…


空の色が完全に変わり、オレンジ色の夕焼けが顔を出した……

---その時


俺の目に頂上が見えた


その先にコンクリートの道はなく、あるのはたくさんの町

俺は自転車を止めて、行き止まりになっている所まで行った


木の柵に手をかけて、見えた景色はオレンジ色に染まった町


彼女が大好きだと言っていた町

それは今までみた景色なんて比べ物にならないぐらい綺麗で、

疲れなんて一気にぶっ飛んでしまった