それから数日の間、俺はその紙を肌身離さず持ち歩いた

気持ちは決まっているのに、いざ紙に書こうとすると上手く伝わらない気がしてペンが止まる


別にこの紙に書く事が全てではないけれど、

こうやって改めて書く事に意味があるんだと思った



『幸汰はもう書いた?』


病室に行く度に彼女は真っ先にそれを気にする


『まだだよ』と答えるといつだって『私も』と返ってくる


彼女もきっと俺と同じ理由で書く事が遅れてるんだと思う


『私決めた!31日の最後の日に書く!』


彼女が突然言った


正直驚いた

だって俺も同じ事を思っていたから


『あれ?なんで?って聞いてよ』


反応の悪さに彼女が思わず突っ込んできた

俺はフッと笑い、彼女の頭を撫でる


『次の日になったら“あれ書けば良かった”“あっちの方が良かったかも”って後悔するからだろ?』


俺の言葉を聞いて彼女は目をまん丸くさせている


『えーなんで分かるのー?』


俺は笑って誤魔化したけど、彼女の気持ちが俺と全く一緒だと思うと余計に笑みが溢れた


書きたい事が有りすぎるのは彼女も一緒みたいだ