初期症状と言われていた彼女だったけど薬の効果がなく、日に日に投与する薬が増えていった


俺が病室にいく度に彼女は笑顔になるけど、その裏側はとても苦しそう


まだ強い薬は投与していないらしく、外見的な変化と言えば少し痩せたぐらい

だけど決して彼女は弱音を吐かなかった


いつも前向きな発言ばかりで、俺も彼女の病気は必ず治ると信じていた



------寒い冬が過ぎ、春がこの町に訪れる頃

『結局雪だるま作れなかったね…』と突然彼女が言い出した


病室の窓からはやっぱり彼女の好きな風景は見れなくて、僅に見えた田んぼは建物で隠れていた


『次の冬にやればいいよ。雪が降らなかったら来年、次もダメだったら再来年』

俺は不器用なリンゴを剥きながら言った


『私もね、幸汰となら来年も再来年もおばあちゃんになるまで一緒に居られるような気がする』


俺は思わず手元が滑り、ナイフで手を切ってしまいそうになった


『やめてよ。プロポーズは俺からするんだから』

彼女は少し涙目になり、嬉しそうに笑っている


17歳の俺達がこんな事を口にするなんて、きっと周りから見れば“若い”の一言で片付けられてしまうだろう


だけど俺は本気で思ってた

結婚なんてまだ大きな事は言えないけど、将来誰かと結婚する日が来たら

それは絶対彼女だと


彼女であって欲しいと