面会時間が刻々と過ぎていく中、彼女は俺の手を握りしめたまま言った


『微熱がずっと続いてるから今日から1週間検査入院する事になったの。でもきっとなんでもないから心配しないで』


感覚がなかった手が彼女の暖かさによってほどけてゆく


彼女はベッドの下に置いてあった紙袋から何かを取り出し、それをそっと俺の首に巻いた


『わざわざ来てくれてありがとう。寒いから気をつけて帰ってね』


彼女が巻いてくれたのは俺があの日貸したマフラー


俺はそれと同時にある事を思いだし、ポケットに手を突っ込んだ


『俺も返さなきゃ……』

それは彼女に借りた片方の手袋

彼女は手袋を受け取り、そっと俺の右手にはめた


『まだいいの、まだ貸してあげる』

寒かった体が彼女の言葉で暖かくなった


---とその時、病室のドアがノックされ、そこから看護婦さんが顔を出した


『そろそろいいですか?9時になると病室が間接照明だけになるので』

面会時間の10分は本当にあっという間に過ぎてしまった


だけど別れ際、俺は彼女に約束した



『毎日学校が終わったら会いに来るから』

彼女がコクリと頷いたのを確認して、俺は病室を出た