時間は19時をまわろうとしていた


まだ真っ暗ではなかったけど、田舎の電灯は薄暗くて冬は1年の中で一番日が短い

気温もかなり寒かったけど、慌てて家を出た俺は薄着だった


寒さをしのぐ為、左手をポケットに入れた

--するとそこには彼女が貸してくれた片手の手袋が入っていた


俺は1分でも1秒でも早く彼女に会いたくなって、自転車を急いでこいだ


40キロ離れた病院まではここから二時間はかかるだろう


大きな病気をするとここら辺の人達はみんなその病院にお世話になる

俺自身ではないけど、近所に住んでいたおじいちゃんが脳梗塞で倒れ、一度だけお見舞いに行った事があった


俺が小学校低学年の時で、あまりその病院にいい思い出はない

だって“大丈夫だよ”と医者は言ったくせにおじいちゃんは死んだから


仕方がない事だと今なら分かるけど、当時は“死”と言う言葉さえ理解出来ずにいた



病院に着く頃には辺りは真っ暗で21時を過ぎていた


手や足の感覚がない

耳がちぎれそうな程痛かった