俺の家の電話が鳴ったのはそれから二日後の事

電話に出たのは俺だった


『佐々木ですけど……』

電話の向こう側で彼女の名字が聞こえた

だけどそれは彼女の声ではない


電話をかけてきたのは彼女のお母さん

彼女と付き合い初めて一年

俺とお母さんはこんな形で会話する事になってしまった


彼女の口から聞いた事はないけど、彼女は家でも俺の事を話していたんだと思う


その証拠にお母さんは俺の事を幸汰君と呼び、うちの娘がいつもお世話になって…と優しく言った



彼女のお母さんは長話しをする訳でもなく、本題をすぐに口にした


本当は嫌な予感がしていた


電話が彼女ではなく、彼女のお母さんからだった瞬間から


電話を切った後、俺は暫くその場に立ち尽くしていた

耳元でプープーと保留音が鳴っている


一瞬何を言われたのかよく分からなかったけど、とりあえずさっきのお母さんの言葉を頭で繰り返した




“娘が病院に入院する事になった”


その原因までは言ってくれなかったけど、ここから40キロ離れた大きな病院に入院するらしい


だから学校に来た二日前に彼女は教科書を全て持って帰ったんだと思う


どうしてあの時直接言ってくれなかったのだろう


彼女は俺にも周りの友達にも何も言わなかった


病院に入院する程彼女の具合は悪いのだろうか?


気付くと俺は外に飛び出し、自転車を走らせていた