物心ついた頃から俺も大人になったらこの町を出ていくんだと思っていた


誰に言われた訳でもない

それは必然的に思う事で、時の流れと共にそうなっていくのだと思っていた



外出時に鍵もかけない平和な町で


周辺に住むお年寄りはみんな俺を孫のように可愛がってくれる町で


夏場になれば窓からカエルが入ってくるような町で


道のど真ん中を歩いても車一つ通らない町で


俺はそんな町を自然な流れで出ていくんだと思っていた


だけど今はこの町で生きていくのも悪くないと思ってる


たくさんたくさん理由はあるけど、一番の理由は彼女


今俺の自転車の後ろに乗って、気持ちよさそうに風を感じている彼女の存在だ