自転車を暫く走らせると、馴染みのある風景が見えてきた
俺の地元に到着した彼女は心なしかわくわくしているように見えた
『ここが幸汰君が育った町なんだね』
彼女は自転車を止め、周りの風景に目を向けた
そこは田んぼだらけの町にポツポツと並ぶ一軒家
真新しい家は一つもなくて、みんな古くからの家ばかりだ
『どこに行ってもこんな感だよ。本当に何もないけどいいの…?』
俺は今さら彼女に聞いてみた
デートすると言っても遊ぶ場所もなければ休む所もない
今日一日どうやって過ごそうか…
俺はそんな事ばかりを考えていた
『いいの。私幸汰君と話してるだけで楽しいから』
彼女がまた俺と同じ気持ちを言った
そんな彼女が愛しくて、今この瞬間にも俺の“好き”は積もった
『あらあら幸汰君じゃないの!』
そんな声が聞こえ振り向くと、そこには近所に住んでいるおばあちゃんが居た
『チヨばあちゃん!もう歩いて平気なの?』
小さい頃から俺を可愛がってくれているこのおばあちゃんは千代田という名字
だから昔から“チヨばあちゃん”と呼んでいる
『大丈夫よ。いつも心配かけてごめんね』
チヨばあちゃんは最近足を怪我したと聞いていたけど、なんとか大丈夫みたい
そんな俺とチヨばあちゃんの姿を見た彼女は嬉しそうに笑っていた