『ねぇ、風が冷たくて気持ちいいね』


彼女はそう言って俺の腰に手を回した

俺はその手を右手で握り、彼女が言う風を顔いっぱいに感じた



俺の住む町はとても小さくて、コンビニすらない田舎町


若者の多くは早くにこの町を出て都会の街へと足を踏み入れる



一度町を離れた若者はほとんど帰って来ない事が多く、帰って来たとしても年に1、2回程度


正月やお盆、そんな行事にしか顔を見せない


慣れ親しんだこの町は結局生まれた町でしかなくて、住みたいと思う場所は他にあるみたいだ


高校三年生になった俺も進路という壁にぶち当たっていた


大学に行くのも就職するにもこの町は不便過ぎる


高校だって毎日自転車で1時間以上走らなければ着かないし、

友達だって家が近くなければ遊べない



そんな何もない田舎町で俺は17年間生きていた