千夏たちが体育館に帰って来たのは、
友理が帰って来てから、
かなり経った後だった。
練習も、かなり進んでいて、
丁度、休憩の時だった。
千夏は、体育館に入って来るなり、
「あー、もう、やってられない」
そう言いながら、明美の所へ行った。
明美の前に立つと、
「何で、こんな事、
しなくちゃならないんだよ」
と、大きな声で言った。
「これじゃあ、
他の練習が出来ないじゃん」
大声が、怒りを呼び、
さらに声が大きくなって行く。
「スタミナをつけなきゃ」
そう言う明美に、
「アケは、レギュラーじゃないから
出来るんじゃん」
それを聞いて佐紀は、ハッとした。
それは、言ってはいけない言葉だと思った。
それに、どう考えても、千夏の言い分は
間違ってる。
千夏を見ると、千夏は怒りで、
顔が赤らんでいた。
佐紀は、また、明美が折れてしまうかと、
明美を見た。
しかし、明美は冷静に、
「わかった。今日はもう、帰って。
また、バスケがしたくなったら、
出て来て」
それを聞いて千夏も、
自分が何を言ったのかに気が付いて、
怒りが、治まってきた。
「ゴメン、言い過ぎた」
そう言うと、麻紀の横に行き、腰を下ろした
佐紀は、もう一度、明美を見た。
佐紀には、明美の変貌ぶりが、
信じられなかった。
あの、自身なさげな明美が、
今は、自身たっぷりである。
いったい何が、明美を変えさせたのか、
佐紀には、わからなかった。
それを知っているのは、華子だけだった。

