弥生と明美は知らなかったが、
本棚の向こうには、華子がいた。

調べ物に来て、遭遇したのだった。

ちょっと、出て行き難かったが、
弥生は、なかなか帰りそうになかった。

いつまでも、ここにいる訳にも行かないし
明美もいなくなったので、帰ろうと思った。

黙って行くのも、まずい気がして、
声をかけることにした。


  「こんにちはー」


  「あら、いたの」


  「はい」


  「今の、聞いてた?」


  「ええ」


  「誰にも、言っちゃだめよ」


  「はい、わかっています。

   では、失礼いたします」


そう言って、華子も、
学習ルームを、出て行った。