明美が誰の事を言っているのか、
弥生には、大体、想像がついた。

確かに、同級生だったなら、自分も、
扱いに困ったかもしれない。

明美の心中は、察するに余りあった。


  「そのことは、皆に言ってあるの?」


  「いえ、まだ……」


  「自分の意思を示すのは、大事よ。

   どんなチームを作りたいのか、
   みんなに言って、その上で、
   意見を聞くなり、そのまま、
   突っ走るなり、しなくちゃ」


  「はい……」


明美の声は、自身なげであった。


  「但し、意見を聞いたからと言って、
   その通りしなければならないって
   訳じゃないのよ。

   チームの方針に合わないモノは、
   切り捨ててもいいのよ」


  「はい…」


  「バスケットに限らず、
   スポーツで一番大事なのは、
   一生懸命やる事じゃない?

   プロじゃないんだから、勝ち負けは、
   その後に来るものだと思うの。

   もし、勝ち負けにこだわるのなら、
   それだけのことをしなくちゃ」


  「はい」