夏休みに入った、ある日の午後。

外は、焼けつくような日差しだが、
図書館の中は冷房が効いていて快適だった


図書館の学習ルームに、明美が入って来た

明美はまっすぐ、奥へと向かう。

そこでは、弥生が、勉強をしていた。

明美は、弥生の前に立つと、


  「こんにちはー」


弥生が顔を上げ、明美を見た。

明美の表情は、硬かった。


  「あら、あなたも、勉強?」


  「あのう……、話があるんですけど、
   いいですか?」


  「いいわよ。何?」


しかし、そう言ったものの、
明美は、なかなか、話を切り出さなかった。


  「どうしたの?、部活のこと?」


すると突然、明美が、泣き始めた。


  「弥生さんは、…なぜ………私を……
   私を…、キャプテンに……
   したん……ですか?」


泣きながら、途切れ途切れにいう、
明美の言葉に、弥生は、戸惑いながらも、


  「あなたが一番、
   適任だと思ったからだけど」


明美の強さを、弥生は、よく知っていた。

その明美が、ここまで悩むのは、
同級生の事だなと、弥生は直感した。

明美は、今まで抑えていたものが、一気に
溢れ出し、コントロール出来なくなっていた


  「私には、……チームをまとめる……
   事なんか……、できません。

   もう……、みんな、勝手な事……
   言って、……バラバラです」


弥生は、凛とした声で言った。


  「しっかりしなさい。
   あなたが泣き言、言ってどうするの」


  「…………」


  「最初から出来た人なんて、いません。
   何度も、試行錯誤して、
   作り上げて行くものでしょう?」


しかし明美は、何も言わず、
ただ、泣きじゃくっている。