「アケさんは、そのこと、
知らないのかなあ」
「知らないはずは、ないでしょうね。
チーム・メイトなんだから」
「なら、何で、言わへんのやろ」
「さあ。でも、少し負い目が
あるのかも知れませんわね」
「負い目って?」
「自分は、レギュラーじゃなかった、
ていうこと」
「えー、そんなぁー。
キャプテンになったんやから、
ビシッと言わな、なあ、佐紀」
「えっ、私?
う、うん。そうだね。
その負い目を乗り越えなきゃね」
「アケさんが、真のキャプテンに
なれるかどうかは、そこに、
かかっているのかも知れませんわね」
華子がそう言うと、3人は期せずして
窓の外を眺めた。
華子は、明美に、キャプテンらしく
して欲しかった。
佐紀は、明美の苦悩を、おもんばかった。
友理は、チームの雰囲気を、
何とかして欲しかった。
3人は、三者三様の気持ちで、
窓の外に広がる空を、眺めていた。
それからも、明美は、何をするでもなく、
淡々と、部活は続けられた。
そして、1学期の間、コーチは、
一度も来なかった。