佐紀たちが、下に降りて行くと、
3年生は皆、座り込んで、
タオルで顔を覆っていた。

佐紀は、声を掛けられなかった。



コーチが、入って来た。

全員立ち上がって、コーチの前に、集まった。


  「よーし、みんな、よくやった。
   結果は、残念だが、
   試合は、終わってしまった。

   3年生は、よく頑張った。
   2年生は、………
   いや、今日は、何も言うまい。

   3年生には、ご苦労さん、と言いたい
   この頑張りは、これからきっと、
   生きてくると思う。

   そして2年生は、3年生のこの、
   悔しさを忘れず、練習に励み、
   3年生の、成し得なかった夢を
   叶えてもらいたい」


3年生から、嗚咽が漏れる。

しかし弥生は、気丈にも、
まっすぐ、コーチを見ていた。

佐紀はそれを見て、
“弥生さんは、強いなあ”と思った。


  「よし、明日からは、
   新しいスタートだ。

   来年こそは、リベンジするぞ。
   いいな」


  「はいっ」



コーチが出て行った後、弥生たち3年が、
前に、並んで立った。


  「みんな、今日まで私たちに、
   ついて来てくれて、ありがとう。

   結果、優勝は出来なかったけど、
   私たちに、悔いは無いわ」


2年生は、すすり泣きをしている。

それを見て、佐紀たちも、
もらい泣きしていた。

華子は、感傷に浸ることなく、
弥生を見ていた。

3年生が次々に、感謝の言葉を言って行く。

佐紀は、鼻をすすりながら、
それを聞いていた。