試合中、チャージ・タイムで、
皆が、ベンチに帰って来た。

コーチが、弥生を見て、


  「ヤァ、きついか?

   お前ら、もっと、走れよ。
   ヤァ一人に、任せっきりだぞ」


その時、華子が、一歩出て、


  「コーチ、走れない人は、いりません。
   このままでは、ズルズルと、
   行ってしまいます。

   ここは、走れる人を出して、
   かき回して、速攻に持ち込むのが
   いいと思います」


  「そうだな。よしっ、千夏、交代だ。
   走れる奴は……」


  「私は、アケさんが、いいと思います」


  「しかし、アケは…」


  「それは、私と弥生さんで、
   カバーします」


コーチが弥生を見ると、弥生はうなずいた。


  「よし!、アケ、行け」


千夏は不満そうに、華子を睨みながら、
出されたタオルを、引ったくった。

華子は、動じず、コーチを見ている。


  「アケ!、とにかく走れ。
   いいな、止まるんじゃないぞ」


  「はいっ」


明美は、こんな競った局面での交代に、
不安を隠せなかった。


  「アケさん、頑張りましょう」


  「アケ!、どんどん、行っていいからね

   いい ?、行くよ。
   イチ、ニッ、サン」


  「ファイ」


弥生は、不安そうな顔の、明美の腰を、
ポンと叩いて、コートへ出て行った。


上から、千奈の声がした。


  「アケさん、頑張れー」


明美は、うなずいて、コートへ出て行った。