朝、佐紀が登校して来た。

前を行く、華子を見つけて、

  「あっ、華子。おっはよー」


  「朝から、元気ね」


  「うん。元気、元気。
   朝練やってほしいくらいだよ」


  「って、何時に起きたのよ」


  「今日はちょっと寝坊したから、
   6時過ぎかな?」


  「何?あなた、まだ、
   早寝早起きっての、やってるの?」


  「だって、目が覚めちゃうんだもん」


  「はいはい、ホント、偉いわね」




話しながら、教室に入ろうとした佐紀の
目の前に、黒い壁があった。

華子を見ながら話していた佐紀は、
それに気付かなかった。


  「うわっ !」


ドンッ、とぶつかる佐紀。


  「あっ、ゴメン」


クラスメイトの、祐太の背中だった。


  「もうー、大きな体して、
   入り口を占領してるんだから」


そう言って、佐紀は、祐太を見上げた。

祐太は、おもむろに振り返り、


  「ゴメン」


そう言って、佐紀のために、通路を空けた。




チャイムが鳴り、皆が席に着く。

佐紀も、席に着いた。

佐紀の前の席に、大きな背中が、
ドスンと、腰を下ろした。