いよいよ、3年生にとって、最後の大会が、
始まった。

インターハイにつながる大会ではあるが、
負ければ、それは引退を意味した。


去年は、地区大会で優勝したので、
シードされていたが、
今年は、ベスト8止まりなので、
第3シードのゾーンにいた。


試合前のアップが終わると、
佐紀は観客席に上がり、
港南ベンチの後ろに、陣取った。

すると、後ろから声がした。


  「サキ!」


佐紀が振り向くと、声の主は、弥生だった。


  「あっ、弥生さん」


  「あなた、一人で応援なの?」


  「はい」


  「1年生は?」


  「今年は、予算が無いということで、
   来れなかったんです」


  「そう」


  「観に来てくれたんですね」


  「ええ。今、この近くの大学に、
   通ってるから。

   一人じゃ、寂しいわね。
   一つ上のキャプテンも来ているから、
   呼びましょう」


弥生はそう言って、上にいた人を手招きした


  「こちら、1つ上の矢島さんと須藤さん
   矢島さんは、キャプテンだったのよ」


  「こちら、今、2年生よね」


  「はい」


  「2年生の、清水佐紀さん。
   残念ながら、ベンチ入りは、
   出来なかったみたい」


  「よろしくお願いします」


佐紀は、こうして、歴代のキャプテンが
見に来てくれるなんて、
やはり甲陽は、伝統ある、
強いチームなんだなあと、思った。