実は、坂井コーチは、少し前から、
ヤル気を失っていた。

メインとなる3年生の反応が薄く、まるで、
砂漠に水を撒いているような気がしていた。


坂井のように、別にコーチを
職業としていない場合、楽しみは、
皆が上手くなって行くのを、見る事である。

しかしそれを、当たり前のように受け取って
言った事の、半分も吸収しないようでは、
ヤル気を失うのも、当然のことだった。


ただ、今までやってきたのは、2年生や、
1年生が、一生懸命聞いていると、
感じていたからである。

しかし、その2年生にしても、
何に遠慮しているのか、
積極性に欠けるように、思われた。

毎日出られないコーチに、チームの内情は
なかなか、わからないものである。


今日、坂井は、久しぶりに、
“よし、やろう”という気持ちが、
湧き上がって来た。


それからは、
坂井の、顔を出す回数が増えた

少しでも時間があると、
行ってみようかという気になった。

すると、部員たちも、必死で、
それに応えようとした。

県大会までの1か月間、部員にとっても、
坂井にとっても、充実した練習が続いた。


そして、県大会の日が、やって来た。