最後の挨拶を終えて、ベンチに帰って来ると
佐紀の所に、千夏が来た。
「いやあ、サキ、よくやった」
そう言って、佐紀の背中をパンパンと叩く。
あまりの痛さに、佐紀が身をよじっても、
お構いなしに、パンパンと叩いた。
「ナツさん、痛い、痛いですよ」
しかし千夏は、あまりの嬉しさに、
佐紀の声は、耳に入らなかった。
耐え切れずに佐紀が、
千夏の元を離れると、
「何だよ。
せっかく、褒めてやってるのに」
千夏は、キレて佐紀に悪態をついた事など、
すっかり、忘れていた。
麻紀と華子は、ベンチの椅子に、
ドカッと、腰を下ろした。
2人とも、忘れていた疲れが、
一気に出て来たのだった。
「まったく、サキ、
人使いが荒いんだから」
しかし、麻紀の言葉には、
親しみを持った響きが含まれていた
「ホントですわ」
華子も笑顔になり、それに答えた。
しばらく休んでいると、佐紀が来て、
「マキさん、ベンチ、空けますよ」
「ちょっと、休ませてよ。
あんたのお蔭で、もう動けないくらい
疲れてるんだから」
そう言う麻紀の顔は、笑顔だった。
それを見た佐紀も、笑顔になる。
「ほらぁ華子も、立った、立った」
「ハイハイ、わかりました。
仰せの通りに」
2人は、重い腰を上げた。

