残分2に近くなった頃、コーチが佐紀に、
声をかけた。
「サキ! 行くぞ」
うなずく佐紀。
佐紀が、指を一本立て、高く上げて、
声をかける。
「ディフェンス、一本。
行くよー」
うなずく華子、麻紀、明美、友理。
攻め手を失った明邦は、パニックに陥り、
ただボールを回すだけだった。
オフィシャルのブザーが鳴り、
審判が笛を吹く。
「24秒、オーバータイム」
甲陽の攻撃。
明邦ベンチから、コーチが大声で叫ぶ。
「当たれ、当たれ!」
明邦は、プレス気味に出てくるが、
主導権を握った甲陽は、難なくかわし、
ボールをフロント・コートに進めると、
最後は、麻紀がノーマークになり、
ジャンプ・シュート
成功。
甲陽、2点ビハインド。
佐紀が声をかける。
「プレス!」
全員が、ピタッとへばりつくと、
明邦はさらに、パニックになった。
頭越しのパスを、佐紀がカット。
すると、明邦は、取り返そうと、
ものすごい勢いで、突っ込んできた。
佐紀は、当る寸前に、3ポイント・シュート
ドンとぶつかり、佐紀は、跳ね飛ばされた。
転がる佐紀。
審判の笛が鳴る。
「ファウル。フリー・スロー」

