第4クォーター開始早々、里香が、
ファウルをしてしまった。

オフィシャルのブザーが鳴る。

  「ファイブ・ファウル」


コーチは、これで、万策尽きたと思い、
交代のメンバーを誰にしようかと、
ベンチを見た。

すると、普段控え目な友理が、なぜか、
前に身を乗り出し、コーチと目が合った。

コーチは、まあいいかと思い、


  「よし、ユリ、行けっ」


と、友理を出した。



友理がコートに入ると、佐紀が寄って来た。


  「ユリ、リバウンド、頑張って」

  「うん」

  「スクリーン・アウトもね」

  「うん」

  「あと9分。走れるでしょ?」

  「うん、頑張るわ」



明邦のスローインで、試合再開。

ボールを受けて、ジャンプ・シュート。


  “バチーン”


友理が、そのボールを、叩き出すと、
弾かれたボールが、思いっきり壁に当たり、
大きな音を立てた。


これが効いた。


友理の事を知らない明邦は、
その見た目の高さと、たまたま
タイミングが合ったシュート・ブロックに
ビビってしまった。

また、それからも、友理の反応が遅く、
制限区域の中央あたりに、よくいた事も
幸いした。

これで明邦は、カット・インし辛くなり、
外からのロング・シュートが増えた。


あわてて明邦が、チャージ・タイムを取る。