ベンチに引き揚げてきたが、誰も、
椅子に座ろうとはしなかった。
丸くなって、意見を言い合った。
佐紀が、
「逆転には、速攻しか無いと思います」
と言うと、麻紀が、
「そうだね。リバウンドを頑張って、
早い展開に、持って行こう」
麻紀も、完全に佐紀のムードに飲まれ、
やる気になっていた。
佐紀が、華子に、
「スクリーン・アウト、絶対ね」
「わかった」
華子も、佐紀に、
「私がディフェンスを引き付けるから
逆サイドに、入って来て」
「わかった」
麻紀も、明美に、
「サキに入らなかったら、
後をアケが、入って来て。
その後を、私が行くから」
「うん。わかった」
うなずく、明美。
そんな佐紀たちを、千夏と和美は、
ふてくされた顔をして、見ていた。
輪の横には、坂井コーチが立っていたが、
コーチも、この輪の中には、
入れない雰囲気だった。
結局、坂井は何も言えず、
最終クォーターが始まった。

