地区大会も近づいたある日。
朝、佐紀が登校して、自分の席に着くと、
華子がやって来た。
「サキ、これ」
華子は、何枚かの紙を束ねたものを、
差し出した。
それを、パラパラッと見た佐紀は、
「わっ、凄―い。
これ、華子が、まとめたの?」
それは、佐紀が1年生の面倒を見ている間に
やっていた、ディフェンスのシステムや、
オフェンスのフォーメーションなどを、
まとめたものだった。
「こちらに戻って来た時に、
困ると思いましたの」
佐紀は、もう一度、見ながら、
「これ、みんなに、配れない?」
「みんなは、知ってますわよ」
「じゃあ、ユリに訊いてみようよ」
佐紀は、友理を呼んだ。
やって来た友理に見せると、
「これ、凄いやん。
ウチも、欲しいわ」
「あなたは、知ってるでしょ」
「あれ、複雑すぎて、
よう、わからへんもん」
佐紀は、“ねっ”という顔で、華子を見た。
「わかりましたわ。
じゃあ、みんなの分も、作りますわ」
「華子、ありがとぉ。感謝するわ」
「サキ、あなたよく、みんなの事まで、
気が回るわね」
「そこが、サキのええトコやん」
翌日、そのプリントを、2年生全員に配ると
皆、喜び、華子の株は、一気に上がった。
佐紀は、皆の喜ぶ顔を、笑顔で見ていた。
そして、地区大会の日が、やって来た。

