ハーフ・タイムには、亜紀が来て、


  「これで、補欠なんですかぁ。
   信じられない!」


  「毎日、走ってるからやん。
   スタミナなら、負けへんでぇ」


  「お前が、言うかっ」


佐紀が、突っ込んだ。
すると、亜紀も、


  「私も、友理さんは、ちょっと違うと……」


  「えー、そんなこと、ないやん。
   ちゃんと、走ってるやろ?」


  「時々ね」


  「走らんでええトコは、
   走らんでええやん。

   そこは、腕や、腕」


そう言って友理は、腕を叩いて見せた。


  「そういうトコだけは、
   悪知恵が働くんだから」


  「悪知恵やなんて、人聞きの悪い事、
   言わんといて。

   いろいろ、考えてんやから」


  「何を、考えてんの?」


  「せやから、どうやったら、
   走らんですむかとか」


  「それを、悪知恵って
   言うんじゃないの?」


  「えー、必要ないトコは、走らんで
   ええやん。

   それは、正当な、権利やで」


  「権利だなんて、大げさな」


  「ウチは、ちゃんと、ココ使うて、
   走らんでエエように、してんねん」


そう言って友理は、人差し指で自分の頭を、
コンコンと、つついて見せた。

聞いていた亜紀たちは、大笑い。


  「いつ聞いても、みんなの漫才は、
   面白いですね」


  「漫才なんか、してへんでぇ。
   佐紀が、言うから……」


佐紀は、スッと立ち上がり、


  「さっ、後半も、頑張ろう。
   友理、ちゃんと走ってよ」


  「うん、走らなあかんトコは、走るで」



しかし、試合中何度も、佐紀の声が聞こえた


  「ユリっ!!、走って!」