今日は、甲陽高校の、文化祭。

体育祭が、運動部の輝く日なら、文化祭は、
文化部が、日頃の成果を発揮する日である。

また、全校挙げての催し物や、店などが出て
賑わっている。


佐紀は、友理や華子と一緒に、
催し物を、見て回っていた。

3人は、書道部の展示場に行った。

教室に入ると、梨沙と千奈がいた。


  「あっ、梨沙」


  「おっ」


佐紀は、梨沙の所へ行くと、


  「梨沙、習字に、興味あるんだ」


  「いや、そういう訳じゃないけど、
   上手いなあって」


  「そういや、梨沙、字、汚いもんね」


  「そんなこと、ないでしょ。
   あれは、ソッキ、ソッキ」


  「ソッキ?」


  「速く書くためのヤツだよ」


  「ああ、速記かぁ」


  「あれは、独特の字体がありますのよ」


  「せや、梨沙のは、普通の字やん」


  「しかも、自分で書いたのに、
   読めなかったりするんじゃない」


  「エヘッ」


梨沙は、その答えに、明言を避けた。

その代りに、


  「そうそう、3組のクレープ、
   結構、いけたよ。

   それと、3年5組の、お団子屋。
   あの、みたらし、美味しかったぁ」


  「さすが、梨沙。
   食べる事は、外さへんなぁ」


  「行かないで、どうするの。
   目指せ、全店制覇、なんてね」


梨沙は、宙を指差し、自慢げな顔になった。

佐紀は、


  「はい、はい、どうぞ、ご自由に。
   じゃあ、次、行こっ」