2試合目、第3クォーター。

チャージ・タイムで、皆がベンチに、
引き上げて来た。

坂井コーチは、友理に、


  「ユリ、交代だ。ミズ、出ろ」


華子が、コーチの前に立った。

コーチが顔を上げて、華子を見る。


  「ん? 何だ?」


  「コーチ、サキが、出てませんが」


  「ああ、あいつは、いい」


友理は、佐紀の名前が出たので、
その横で、ベンチを整理するフリをして、
聴き耳を立てていた。


  「なぜですか?
   サキも、見てやってください」


  「あいつは、小さくて、取り柄が無い」


  「3ポイントなんか、
   いいと思いますが」


  「3ポイント・シューターなんか、
   他にもいるだろう。

   あの身長では、高校では、
   使い辛いんだ。
   何か、持ってないとな」


しかし、坂井コーチは、少し考えて、


  「よし、わかった、お前が言うのなら」


そう言うと、隣にいた友理を見て、


  「ユリ、サキを呼んで来い」


それを聞いて、友理がパッと笑顔になる。


  「はいっ、わかりました」



チャージ・タイム終了のブザーが鳴る。

佐紀が嬉しそうな顔で走って来て、
ベンチの最後尾に座った。

佐紀は、これ以上ない笑顔で、
華子に向かって、ガッツ・ポーズをする。

華子も、軽く手を上げ、それに答えた。

佐紀は、いつ試合に出られるかと、
ワクワクしながら、一生懸命、
声援を送っていた………………………………