ベンチの椅子を片付けながら、友理は佐紀に


  「佐紀ぃ、華子に、礼、
   言わなあかんで」


  「えっ、何?」


  「ベンチに入れたのは、
   華子がコーチに、佐紀の事、
   訊いてくれたからなんやで」


佐紀は、片付ける手を止めて、


  「あっ、そうなんだ。
   華子、ありがとう」


  「コーチに訊いたら、
   “あっ、忘れてた”って
   言いましたのよ」


それを聞いて“えっ”と思った友理は、
華子を見て、それから佐紀に、


  「佐紀が小っちゃいから、
   見えへんかったのとちゃう?」


  「そんなに小さくないよぉ。
   でも、試合、出たかったなあ」


  「あんな後ろに座ってたから、
   小っちゃくて、きっと、
   見えへんかったんやで」


  「ハハハ、それはあるかも、
   しれませんわね」


  「もうー、華子までぇ」


プッと膨れる佐紀。

華子が友理を見てうなずくと、
友理も、うなずいた。