「練習、行くわよー、ストレッチ」


みんなが、コートに散って行って、
ストレッチを始めた。


コート・サイドでは、みんな恐縮して
座っていた。


  「スクウェア・パス」


キャプテンの一言で、
あらかじめ決まっていたかのように、
一斉に走り出し、定位置につく。

スクウェア・パスが始まった。


佐紀は、中を見たまま、梨沙に話しかけた。


  「キャプテン、カッコいいね」


  「うん。でも、あの人、本当に
   キャプテンなのかなあ」


「そうだよ。ちゃんと、指示出してるし」


  「でも、
   すぐに相談してるみたいじゃん」


  「えっ、相談なんか……」


話が噛み合わないので、梨沙を見ると、
梨沙は、男子の練習を見ていた。


  「梨沙、見るトコ、ちゃうで」


  「もうー、梨沙ぁ」


  「ね、ねっ、あの人、カッコいいと
   思わない?」


  「うん、確かに」


  「もう、佐紀も、乗ったらアカン」


  「あなたたち、天真爛漫でいいわね」


  「だって、こんな練習なんか、入ったら
   いつでも出来るじゃん。
   それよりも、楽しい高校生活を
   送るためには、っと」


  「出来るかしらね」


  「えっ、どういうこと?」


  「今、部員が12人いるでしょう。
   私たち8人が入ると、20人。
   ちょっと多いと思わない?
   ほかにも、入るかもしれないし」


  「うーん。私たち、少人数でやってたから
   よく、わかんない」


  「少数精鋭じゃん」


  「コーチは、12人が、
   一番効率がいいと、言ってたわ。
   まあ、良くて15人まででしょうね」


  「えぇー」


梨沙は、座っている8人を、順に見て行った。


「ああー、こりゃ、ダメだ」


「ウチも、アカンわ」


「じゃあ、ちゃんと、見ておかなきゃ」


梨沙は、かしこまって座り、真剣に見始めた