**  入学式  **


  「いってきまーす」


佐紀が元気な声で、玄関を出て行った。

今日はいよいよ、高校の入学式である。


  「佐紀~、おっはー」


後ろから、梨沙が走ってきた。


  「あっ、おっはよう」


  「へへっ、女子高生だぜぃ」


そういって、制服を見せびらかすように
クルッと回って見せた。


  「同じクラスだといいね」


  「何言ってんの。
   佐紀は、優秀なんだから。

   同じになれる訳、ないじゃん」


  「そんなの、わからないじゃない」


  「絶対、違うって。
   私なんか、滑り込んだような
   もんだからさ。

   これから、付いて行けるか、心配」


二人は角で、立ち止まった。


  「友理、遅いなあ」


  「もう、ホントに、
   ごゆっくりなんだから」


  「あっ、来た、来た」


向こうから、友理がやって来た。


  「早く、早くぅ。遅れるよ」


しかし友理は、ゆっくりと歩いてくる。

次第に友理の姿が、大きくなる。

そしてその姿は、いつまでたっても
大きくなるのを、やめなかった。


  「おはようさん」


3人、並んで歩き出した。


  「おっはよー。
   友理、また背、伸びた?」


  「何やの。高校最初の言葉がそれ?
   そんなことないわ」


  「いや、絶対、伸びてる」


  「友理、どうなの?
   私も、そう思うんだけど」


  「えー、ちょっとだけやん」


  「やっぱ、伸びてんだ」


  「もう、背ぇの話は、ええやん。
   結構、気にしてんやで」


  「ハハハ、だってデカ…、
   あっごめん
   大っきいいんだもん」


  「もー」