平成22年9月27日土曜日

見慣れた顔の集団が、黒衣に身を包み、棺の前に佇んでいる。
葬式だ。
(僕・・・どうして・・・?)


2日前のこと。学校の帰り道、いつもの横断歩道の前で交通事故があった。
男子中学生一人が、事故に巻き込まれたが、病院に運ばれたときには、すでに息を
引き取っていた。
その事故があった時、僕はその現場にいた。
赤く染まった学ランと、ぐちゃぐちゃになった彼の手足を、ただ呆然と眺めていた。


(あれは・・・僕?)
現に、今僕は半透明で足を浮かせている。
「死ん・・・だ・・・?・・・ぼ・・・く・・は?」
突如、僕の中に恐怖という感情が芽生え、重く圧し掛かる。
震える体にまとわりついた冷気が、残酷な現実を嫌でも僕に実感させようと迫り来る。
消えていく。
僕の肉体が、記憶が、心が。
何もかもが・・・消えていく。
「いや・・・だ・・!消えたくない・・・!!」
最後の力と気力を振り絞り、僕は叫んだ。
この声が、誰にも聞こえないのをわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
そんな思いも空しく、僕は文字通り、この世を去った。