~悠人~



 轟音が鳴り響く。


 先ほどから階上がとてもうるさい。


「まったく・・・少しは静かにしろよ・・・集中できないだろうが・・・。」


 誰もいない地下室で、悠人は誰に言うでもなく一人ぼやいた。


 男に捕まることちょうど、25日目。


 ずっと、この日だけを待っていた。


 この日のチャンスをずっとうかがっていた。


 魔力が最も高まる、月に一度の夜。


 ・・・満月・・・。


 今日を逃したら、次に満月が来るまで、自分は持たないだろう。


「こういう古典的な手段は今さらはやらないんだけどな・・・。」


 一人、愚痴るが他に手段はない。


 どういう理由か分からないが、ちょうど良くアジト内が混乱もしているし、今ほどのチャンスは二度と来ない。


 悠人はゆっくりと右手の包帯を紐解く。


 あの時、ニンジャに撃たれた銃創。


 栄養を取っていない身体は怪我の治癒すら遅くしていた。


 包帯を取ると、骨と皮だけになった自分の手のひらを見ることができる。


 この部屋に鏡はないから分からないが、おそらく今の自分の身体全体、こんな感じなんだろう・・・。