―冬紀side――

遥花ちゃんが、もう帰ってこれないかもしれないことはおばさんから聞いてた。でもそれは、遥花ちゃんには内緒って事だったから、最後まで言わなかった。
きっと、遥花ちゃんのことだ。僕に言わずに行ってしまう。でも、僕にはそれを止める資格はない。だから、最後まで、笑って送ろうと思った。

「笑えないよ…」


もうさっきまでいた遥花ちゃんはいない。僕は動けず、その場にしゃがみこんで、ただ泣くしかなかった。
ずっと好きだった遥花ちゃんには
もう会えない。
結局最後まで想いを伝えられなかった。

それどころか、遥花ちゃんにもらったペアストラップですら、渡すことができてないのに

「情けないなぁ」

ポケットに入れたままのペアストラップを取り出し、握り締めてみても、ただ冷たいだけだった。