「ラミカ、目を閉じて、耳を塞いでろ」
「え?」
「すぐ済むから、な?」
ゆっくりと体を離して、助手席から出てきた男に目をやった。
「お前、この女の何だ? この間も若い奴らがやられたしよ」
「同業者の顔くらい覚えておけ」
「同業者? ……なおさら分からねぇな。債務者を何故守る?」
「お前に話す筋合いはねぇ。これ以上、こいつに手を出したら事務所ごとぶっ潰すからな」
ハットとサングラスをかけた男は黙ったまま、ジッと俺を見てきてニヤリと不気味に笑った。
「兄ちゃん、この世界にまだ入ったばかりだろ? 同業者のシマに足を踏み入れるのはタブーだ」
あ?
「威勢がいいのは嫌いじゃねぇけど覚えておきな。俺の気分次第で、お前の命は一秒後に消えるってことに」
男は懐に手を入れて拳銃の形をスーツの上からちらつかせた。


