聡ちゃんが帰ってくるまでお互いに無言だった。何もすることがなくて、コロコロでじゅうたんを掃除し始めた。
「……食事づくりに掃除。まるでメイドさんね」
「それがあたしの役割だから」
伊織さんは皮肉を言ったみたいだったけど、あたしは全く腹は立たなかった。
時計の針が12時を過ぎた頃、鍵を開ける音が聞こえてきてあたしは慌てて、玄関に向かった。
「お帰りなさい」
「おう」
聡ちゃんは疲れた表情で靴を脱ぐと、伊織さんのヒールを見て顔色が変わった。
「……伊織が来てんのか?」
「うん。よく分かったね」
「香水と靴でな。わりーけど脱衣室にいてくれねーか?」
「何で?」
「ちょっと騒がしくなるから……いや、俺らが外に出る」
「そんな必要ないわ。私は三人で話がしたかったの」
急に伊織さんがあたし達の会話に入ってきた。三人で?あたしも?
やっぱり魚もう一枚焼けばよかった。


