その日のうちに、佑くんに気持ちはないとキッパリ断った。
本当に好きなら、助けてくれていたはず……
きっと、そこまで本気じゃなかったんだ。フラれても、あたしのように苦しくはないでしょ。
あたしはいつまでたっても、苦しみと悲しみの迷路から抜け出せない……
――深夜2時、アパートに帰ると、あたしの部屋の前で一人の男の人が座り込んでいた。
「え……」
嘘……
持っていた買い物袋が地面に落ちる。その音に反応して、ゆっくりと顔をあげたその人は優しい笑顔であたしを見てきた。
「久しぶり、ラミカ……」
「お父さん!」
あの日、解散と言われてからずっと会えてなかったお父さんが目の前にいた。
嬉しさで涙が出て、依然よりも細くなったお父さんの体に抱きついた。
「ごめんね……やっと見つけた」
「うん……よかった。元気そうで安心した」
借金の取り立て屋に見つかって、ひどい目に合ってないか心配だったから……
「あがって。お茶入れるから」
「うん」
ワンルームの小さな部屋にお父さんを入れて、ヤカンに火をかけた。


