「かわいい〜!」
小さな肌着からも手が出ないくらいの体。ベビー布団の上で赤ちゃんはスヤスヤと眠っていた。
「名前は?」
「女の子だったら私がつける予定だったんだけど、男の子だから恒に任せたの」
エミさんはあたしに麦茶を出してくれると、お兄ちゃんになった琉生くんを抱っこした。恒さんは、ベランダでタバコを吸い終えると部屋に入ってきた。
「名前って一生もんだから悩むんだよな。でも、やっと決めた。総一郎(そういちろう)」
……そういち…………
「聡ちゃんが聞いたら喜ぶだろうな。そういえば……この街から逃げる前の夜に、聡ちゃんが言ってくれたんだ……」
1LDKの部屋を借りようって……
そんなに広くなくてもいいって言ったのに
「いつか家族が増えるから広い部屋で暮らそうって。聡ちゃん、パパになるのが夢なんだって。あたし達も二人は子供が欲しいな」
子供が欲しい……
そう言った瞬間、小さなソウちゃんが泣いた。ママのエミさんは琉生くんを恒さんに預けると、ソウちゃんを抱っこして、おっぱいを飲ませた。
不思議……
誰にも教えてもらってないのに、どうしてこんなに小さな赤ちゃんが母乳を飲むことができるんだろう?


