事務所は真っ暗で、暴力団反対と書かれた幕が大きく貼られていた。


近隣住民の反対運動で、場所が移ったのか……



「聡一、もう組とは関わるな。雨も降ってきたし帰ろうぜ」



恒はパーカーのフードを頭にかぶり、俺の肩を組んできた。



「……そうだな。アニキがいつ出てくるか分からねぇけど。その時きちんと挨拶に行く」



どうしょうもない俺を拾ってくれてありがとうございましたって……



「あの、ここの事務所の方ですか?」


「え?」



不意に後ろから声をかけられて、振り向くと髪の長い女が立っていた。そして……



「ああ、金髪のあなた。見たことあるわ。あなたでいいわ」



目の焦点が合ってない。この女、もしかして……



俺は無意識で隣にいた恒を突き飛ばした。同時に女が俺の懐に入り込んできて、鋭利なナイフが腹に刺しこまれた。



「聡一!!」



雨と共にポタポタと地面に滴り落ちる赤い鮮血……



「お前らのせいで妹は自殺したのよ……みんな残らず殺してやるわ! アハハハハハハハハハハ!!!!」




この女は、被害者家族だ――。