「コーヒーでも飲むか?」
「は?」
何だよ、急に。だけど久しぶりに飲むコーヒーはうまかった。毎朝、俺にコーヒーを入れてくれていたラミカの姿を思い出してしまった。
最初は粉をケチって超薄いコーヒーを入れてくれたんだよな。また食パンの耳のトースト食いてぇな……
「今回の人身売買事件、率直にどう思っている?」
「……胸くそわりぃな。俺もずっと考えていた。どうしてアニキはそんなことをしていたのか」
違法なことをしていたのは知っていた。だけど、高金利で金を貸し付けたりしている程度だと思っていたのに……
「債務者を風俗で働かせることも疑問に思って、一度アニキに聞いたことがある。債務者を救済してやってるんだって」
莫大な借金を作って、生きる希望を失って自殺したり、道端でのたれ死ぬ前に保護しているなんて
その時の俺は納得いかなかったけど、きちんと完済したら債務者を解放していたし、アニキなりの不器用な優しさがあったのかもしれない。
だけど人身売買なんてことは……
「もし、自分の身内や女が金で取引されて玩ばれていたとしたら……考えただけで……殺したくなるな」
「言葉は適切じゃないが、同感だ。許しがたい事件だ」
アニキは上からの命令で動いていたに違いない。そして、俺に話さなかったのは俺のため……
やっぱりあの人は不器用な人だ。


