「それと、ラミカがあんたに会いたがっていた。今はどこに住んでいるか分からねぇけど、借金の整理を済ませたら探しだして会いに行ってやれ」
「ラミカが……私に?」
「臆するな。堂々と会いに行って謝罪すればいい。ラミカにとって父親はあんた一人だけなんだから」
ラミカの親父は俺があげたタバコを両手でグッと握りしめた。
「ありがとうございます……! お兄さんのおかげで希望がもてたよ。あと、いつかまた会える日が来るなら……」
「何だよ」
「娘はやらん! ってちゃぶ台ひっくり返しても怒らない?」
…………………………。
……………………。
「キレるに決まってんだろ!?」
「じょ、冗談だよ! 一度やってみたかったんだよ。うん、そうか……。私の知らないところでラミカを助けてくれていたんだね」
「別に。早く吸えよ。時間なくなるぞ」
「ありがとう。お兄さんの名前、聞いてもいい?」
「……長谷部聡一」
「聡一くん、ありがとう」
まさかこんな場所でお礼を言われるなんて思ってもみなかった。
猫背で覇気のなかったおっさんの姿はなくなっていた。ピンと背筋を伸ばして、目がキラキラと輝いていて生気を取り戻しているように見えた。
もう、道を踏み外すことはないだろ。俺も、ラミカの親父も――……


