「お兄さんは? 借金の取り立てで?」
「いや、俺は……」
あんたの娘と暮らしていたからなんて言えない。言えないけど……
「盗みならそこまで長く拘留されねぇだろ。ここを出たら、自己破産しろ。おっさんのせいで、あんたの娘は風俗に売られそうになったんだから」
「――!」
ラミカの親父は俺の肩を強く掴んできた。
「どうして! 私さえあの家を出れば取り立ては来なくなると思ったのに。ラミカは関係ないだろ!」
「あのな、俺が言うのもおかしいけどおっさんの借りていた場所が悪かったんだよ。闇なんかに手を出すもんじゃねぇ」
そこまで言うと、呆然としながらまた隣に腰かけた。
情けない親父だけど……ラミカを思って家を出たのか。親が子を想う気持ちはみんな一緒なんだな。
「安心しな。ラミカは売られてねぇから。きちんと学校にも行ってるし元気だよ」
「どうしてそんなにラミカのことに詳しいんですか?」
「それは……」
灰皿にタバコを押し付けて火を消すと、開けたばかりのタバコの箱をラミカの親父に手渡した。
「いつか、きちんと挨拶に行くから。娘を手離す覚悟をしておいて下さい」
「え? ちょっと! お兄さん?」


