ドアをコンコンとノックされる音が部屋に響く。また警察?露骨に嫌な顔をすると、お母さんが出てくれた。
「はい、どちら様ですか?」
「ルームサービスです」
「そんなもの頼んでいませんけど」
「いえ、確かにこちらのお部屋です」
ワゴンを押しながら入ってくる女の人は部屋の鍵をかけると、アップにしていた髪をほどいた。
「えっ……」
「ラミカちゃん、探した」
「杏さん!」
聡ちゃんのお姉さんの杏さんだった。思いがけない人の訪問にあたしは嬉しくなって、抱きついた。
「杏さん! 聡ちゃんがっ……」
「うん。テレビも新聞もこの事件のことばかり。ラミカちゃんの居場所も聡一と関係のある私達には教えてもらえないの。皆吉に調べさせて、見張りの警察がいるかもしれないから念のためこの格好で入り込んだんだ」
「そんな……聡ちゃんだけじゃなくて、杏さん達にも自由に会えないんですか?」
「人身売買だよ。酷い事件だもん。聡一は違うけど、ラミカちゃんはまだ未成年だから。いくら合意だったとしても罪に問われるの」


